第6話 重度の認知症で食べることを忘れてしまう

想い出日記 想い出日記
2022/02/10 第6話 重度の認知症で食べることを忘れてしまう

【想い出日記】


全くの無反応。  
動かない。

表情もなく、ただ椅子に座っているだけの胃ろうの男性患者さんでした。 
初めての訪問で、ちょっと嚥下リハをおこなってみたのですが、全くの無反応。

お名前を聞いても、お歳を尋ねても、 
反応できたとしても、うなずいているだけの状態でした。


毎週訪問して、口腔ケアと嚥下リハをおこなっているのですが、 
奥様が本当によく施設に来られて、献身的にお世話をしておられました。 
私たち歯科と一緒に、嚥下リハを覚えて、訪問が無い日も頑張ってくださっていました。


半年ほど経過した時には、顔貌も変わり、顔の血色もよくなっていました。 
ある日、嚥下内視鏡検査で「飲み込む機能」の検査をしてみましょう、となり 
お部屋で、奥様、介護士さん数名と、モニターに映る画像を観ながら検査を始めました。 

※施設の職員さんと一緒に検査ができるのは、職員さんにとっても勉強になるし、 
 経験として、今後の介護に生かせてもらえるので、非常に有意義です



すると、ムセもおこらずスムーズに飲み込めています。 
用意していたプリンにもチャレンジしたのですが、 
お口を真一文字にし食べようとしていただけません・・・ 





何度目かの検査時に、奥様からお聞きしていた情報で「主人はビールが好きでした」と! 
訪問チームは考えて、炭酸水でやってみようと試みます。 
すると「シュワシュワ感」が心地よかったのか、懐かしく感じていただけたのか、 
炭酸水もうまく飲んでいただけました。



しかしプリンだけはどうしても拒否でした・・・ 
すると奥様が「主人はプリンが嫌いだったんです」と。



でも、楽しく🎵検査ができたり
奥様との関係性も深まっていけたし
学ぶことも沢山あったので、良い経験をさせていただいたんです(*^^)v



その後も順調に口腔ケアと嚥下リハをおこなっていき、すごくお話までされるようになり、 
奥様から「主人はお寿司が好きでした」と、またまた情報をお聞きし、 
酢飯でチャレンジしてみることになりました。 

もちろん、液体での検査でもムセが起こらなかったので先生が判断されました。



酢飯で検査をする日がやってきました。 
奥様のお手製のちらし寿司をご持参くださり、さっ、チャレンジ! 
ところが、これまたお口を真一文字に閉じ食べていただけません。 


しかし、少し強引にお口に酢飯を入れて唇をふさいだところ、咀嚼をし始めたのです! 
しっかりと何度も何度も咀嚼し、最後はゴクリと飲み込んでくださいました。 
奥様の「美味しいか?美味しいやろ!美味しいと言うてみ!」とご夫婦の掛け合いに、 
訪問スタッフ一同、和やかな気持ちになり、とてもうれしく感じ、やりがいも感じていました。



ふた口目にチャレンジ! 
すると凄いことが起こりました!


今度は、ご自身でスプーンの上に乗っている酢飯を見て、自らお口を開けてお口に入れ、  
しっかりと咀嚼を始めました。 
奥様が「先生!食べたの1年半ぶりです!ありがとうございます!」と 
本当に嬉しそうに話してくださいました。


認知症が進み食べることも忘れてしまっている様子で 
少しきっかけを作ると、「思い出すんだな~」って 
私たちも貴重な勉強をさせていただきました。


  

ご自身の目で見て👀 
自らお口を開けて含んで👄 
しっかりと咀嚼をして飲み込んでくれました。🦷


また時間が経つと食べることを忘れてしまいますが、 
奥様にとっても、ご主人にとっても、 
かけがえのないひと時をお過ごしになられたと思います。


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