【歯科医院編】訪問歯科診療! その手法と考え方とちょっとしたコツ!
目次
「患者様が喜ぶ訪問歯科診療」とは
「患者様が喜ぶ訪問歯科診療」って、一体どんなことでしょうか?
ひと言で「訪問歯科診療」と言っても様々な形態(やり方)があります。
中でも、一番重要なのは「コミュニケーション」が圧倒的に重要です。
もちろん歯科治療の技術も大切ですが、「お人対お人」の触れ合う訪問歯科診療の現場では、 高齢者がほとんどということもあり、「人間味溢れる」「人間臭い」「優しく穏やかで心温まる」診療(応対)が大切になります。
「患者さん、ご家族目線」 「訪問先目線」 「歯科目線」と、3者の目線でみてみましょう!
それぞれの想い 十人十色 (患者、訪問先、歯科)
人それぞれ、ご家族それぞれ、訪問先の諸事情、歯科の想いなど、十人十色であることを経験してきました。
良いことが「良い」ではないケースが存在し、悪いことであっても、本人にとっては「良いこと」が存在しています。
患者さん、ご家族目線
ではまずはじめに、「患者さん、ご家族目線」についてお話しいたします。
※厳密にいうと、「患者さんの想い」と「ご家族の想い」は、必ずしも一緒ではなく、
むしろ違っているケースが多々あります。
◆やさしく気さくに話せる歯医者さん
◆とにかく、余計なことはしないでくれ(必要な治療だけしてくれ)
◆母(父)が喜ぶようにしてやって欲しい
◆食べられるようにしてほしい
◆本当にちゃんと診療しているのか?
◆お金を払いたくない
◆自分でやっているから必要ない
などなど、想いは様々である。
事例
①食べることが大好きなご本人は胃ろうになるも食べたい願望は強く、ご家族は主治医の先生から「食べてはいけません」と指示されており、どうしても食べさせてあげられない。
※苦しい状況ですよね。食べさせてあげたいけど、誤嚥してしまう・・・
※嚥下リハをおこない、「お楽しみ」程度でもお口から「食べられる(味わう)」ようにして差し
上げたいです。「食べる」ことは、「人間の尊厳」でもあります。
②娘に診療費を出してもらうのが申し訳ないと感じるご本人と、
母が良くなるようにお願いします!と願うご家族との想いのズレが存在しています。
※このケースはエリアマネージャー(AMG)の存在のおかげで本質を見極めることができ、双方に
お話をして訪問歯科診療の申し込みに至り、両者にとって良い訪問歯科診療をお届けできまし
た。
どちらも家族愛なのですが、この事例以外にも様々な想いが隠れており、それらの「想い」を見つけ出し、一人でも多くの方のお役に立てるのがこの訪問歯科診療だと思います。
関連:【歯科医院編】エリアマネージャー(AMG)とは(製作中)
訪問先の目線
では次に、「訪問先目線」についてお話しいたします。
※訪問先については、非常にデリケートな部分、諸事情もあり、全てをありのままに表現すること
は難しいことをご容赦ください。
★余計な仕事が増えるんじゃないの?
★前の歯科でいいんじゃないの?なぜ変えるの?
★口腔ケアのやり方を説明されても・・・(忙しい、優先順位が低い)
★ただでさえ人材不足なのに・・・
★施設が歯科の診療費を請求させられるの?
★なんだかんだと手が取られる
★摂食嚥下も診てくれるんだ
★口腔ケアやいろいろな手技を教われる
などなど、良く思われるケースは本当に稀である。
ゆえに、新規で訪問歯科参入の際には、ちょっとしたコツと、自医院の努力とトークが必要になります。下記記事にてお伝えします。
歯科の目線
◆素晴らしくクオリティの高い診療技術がある
◆良い入れ歯を入れて、より食べられるようにしてあげたい
◆手際が良く短時間で治療を終わらせる
◆患者さんのことを心底考え、常に良くなるように考えている(訪問先にも求める)
◆様々なスキルや方法を、一生懸命、訪問先へ伝えたい
◆口腔ケア用品など、グッズ類を頻繁に提案(案内)する
◆あれもこれも説明することが、患者さんのためになる
◆訪問先にとってもメリットである
すでにお気づきになられた方もいらっしゃるかと思いますが、
「歯科目線」と「患者さん、ご家族目線」 「訪問先目線」とでは、相反する内容になっているように思います。
歯科側の良い所を一生懸命に伝えるも、
・患者さんやご家族の「願望」にマッチングしていない
・訪問先にとっては、只々迷惑であることが多々ある
訪問先スタッフさんからは、この様な歯科医院さんの話がよく聞こえてきました!
※上記にあげたものは、ほんの一例です。
人生の大先輩方に敬意をもって、素晴らしい訪問歯科診療を提供したいですね。
もちろん、「良質な歯科医療」を担保しておく必要はありますが、患者さんやご家族には、歯科側が考えている内容とは、ほど遠いお考え(想い)が存在していることを、頭の隅っこに置いとおくことも必要かと思います。
患者さん、ご家族の「願望」について
初対面でなかなか全てを「傾聴」し、引き出すことは難しいですが、「歯科側」からできることは何かないでしょうか。
当然、一度もお顔を拝見することなく訪問歯科診療を申し込まれるケースも多々あります。
そこで非常に重要となってくるのが「コミュニケーション」です。
では、一体どうやって「コミュニケーション」取ればいいのでしょうか。
大きく分けるとすると
①お電話する時
初めの段階で、検診結果や申込書等を郵送した際に お電話をして届いているかの確認をする
時など
②治療などの確認をする時
治療が必要な時に、状態等の説明や治療をおこなうことの承諾の説明時など
③診療時の報告の時
毎回報告するわけではありませんが、何か特別なことがあった時や、保険証の期限が切れる前
など、何か報告するような時など
詳しくは下記関連記事をご参考ください
関連:【歯科医院編】訪問歯科診療におけるコミュニケーションとは(製作中)
この作業が非常に重要であり、「信頼関係の構築」には絶対に欠かせません。
この時に、患者さんやご家族の「願望」を「傾聴」する必要があり、それにはちょっとした「技術」や「トーク」が必要不可欠です。
願望について、いくつかをご紹介します。
◆ぜひ、しっかりとやっていただきたい
◆やってあげたいが、隔週や月に1度でいい
◆無関心
◆喧嘩している(絶縁状態や関知したくない、仕方なし)
◆お金が出せない(出したくない)
◆食べられるようにしてほしい
ひとつずつ事例を交えていきます。
ぜひ、しっかりとやっていただきたい
ご両親想いのご家族さんです。
・気になっていたんです!歯医者さんに来てもらえて安心です!
・私が頻繁に行けないので、よろしくお願い致します!
・お口は大切ですから!
・口臭があるので、何とかなりますかね?
・食べるのが好きなので、何とか食事形態をあげて欲しい
など、前向きに考えておられる、理解があるご家族さんのケースで、このケースのご家族は、すぐに訪問歯科の申し込みを出してくださいます。
「願望」にマッチングしているケースですね。
やってあげたいが、隔週や月に1度でいい
ご理解があるご家族さんですが、何らかの理由が存在しているケースが多くありました。
・ある程度は自分でできるので隔週(月1回)でお願いします
・どれくらい(何回ぐらい)で、終了になりますか?
・悪い所の治療が終わったら、終了にしてください
やってはあげたいんだけど、余計な出費は避けたいご家族さんのケース、様々なご事情があり、痛みを取り除いたり、必要な個所の治療、口腔ケアの間隔をあけるなど、出費を最小限に抑えたいケースです。
無関心
あまりご関心がないケースも多々ありました。
・あっ、また申込書を読んでおきます
・忙しくて見てないんです
・届いていません
・連絡をいただけない(留守番電話やお手紙で対応しても)
本当にお忙しくされているケース
手続きなど面倒くさいことが苦手なケース
申し込みたくないケース
などがあり、
この場合はなかなかお話をする機会が少ないので、話せた時は特に貴重な会話になります。
喧嘩している(絶縁状態や関知したくない、仕方なしに)
数としては、それほど多くはありませんが、ちょくちょく出てくるケースで。
・絶縁状態で、身元引受人という形式だけなので
・本人(患者さん)がお金が無いから申し込めない
・関わりたくない
・長男(実権があるご兄弟など)に怒られるから
などなど、過去に様々な経緯やご事情があったケースで、我々にはどうしようもない状態です。
お金が出せない(出したくない)
余分なお金が出せないケースや、息子さん娘さんにお金を出していただいているケースでは、お願いしたくてもお願いできずにいる患者さんもいました。
・口腔ケアを依頼する余裕がない
・息子さん娘さんにお世話になっている
・過去にいろいろあった
このケースは、「お金」が原因になっているので、なかなか申し込みには繋げられませんが、
保険証等をしかりと確認すると、負担金がかからない(限度額や少額)場合がありますので、
ややこしいですが様々な保険証関係を知っておく必要があります。
関連:【患者様向け】保険証について(作成中)
関連:【患者様向け】指定難病について(作成中)
食べられるようにしてほしい
先出しの「ぜひ、しっかりとやっていただきたい」と同様になりますが、あえて別に記載しています。このケースでは、患者さんご自身やご家族が「食べること」を本当に大切に思っておられるからです。
・食べることが唯一の楽しみ
・昔から食べることが好きだった
・ひと口でも味わわせてあげたい
強い想いがあっての、訪問歯科診療のお申し込みになるかと思います。
下図は、高齢者施設での「楽しい事」の順位です。
いかに食べることが重要であるかを、歯科医院側も理解して、摂食嚥下の知識を最大限発揮していきたいですね。
これらを「傾聴」して、どのように訪問歯科診療の申し込みに繋げていくのか、訪問歯科診療の申し込みに繋げることが、多くの方々の幸せに繋がっていきます。
根本は、「患者さんの喜びと満足」です!
訪問先の現状について
ほとんどの高齢者施設においては、「人手不足」であることを大前提に行動していく必要があります。この事実を無視して「営業」や「訪問診療」や「勉強会」をやっていこうとすることは、ナンセンスです。
◆新規開設だがスタッフが集まらずに、部分的にしかOPENできていない
◆日中の人員が足らない
◆夜勤者に残業してもらている
◆休みが取れない(少ない)
◆食事介助で手がいっぱい
◆お風呂に入れる手がない
◆季節のイベントに割く時間が少ない
などなど、ほんの一例ですが、これらの状況を把握し理解していないといけません。
こんな状態で、
訪問歯科の営業に行ったり、
スタッフの手を煩わすような診療形態であったり、
施設のためにと、勉強会を強く薦めたり、
すでに「入口」の段階で、訪問先側から苦虫を潰されていることが、簡単にイメージできますよね。
詳しくは
関連:【歯科医院編】訪問先で臨まれている訪問歯科診療とは(製作中)
まとめ
◆「お人対お人」の触れ合う訪問歯科診療
◆「人間味溢れる」「人間臭い」「優しく穏やかで心温まる」診療(応対)が大切
◆人それぞれ、ご家族それぞれ、訪問先の諸事情、歯科の想いなど、十人十色である
◆患者さんやご家族との「コミュニケーション」
◆患者さんやご家族の「願望」を「傾聴」する必要性
◆「傾聴」するには、ちょっとした「技術」や「トーク」が必要不可欠
◆高齢者施設での「楽しい事」の第1位は、「食事」
◆根本は、「患者さんの喜びと満足」
◆「訪問先の現状について」の理解
◆患者さんやご家族が何を望んでいるのか
◆今どんな状態で、どうしたら患者さんやご家族とのギャップを埋められるのか
訪問歯科診療の先には、患者さんの今後の人生に「笑顔」をお届けできます。
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